発売から40年、愛され続けて来た『冷凍うどん』にちなんで太く長く愛され続ける各界の著名人の皆さんに<愛される秘訣>を教えていただきます!
第1回目に登場して頂くゲストは、昭和の文化や風俗を、独特の切り口で掘り下げるコラムを発表し続けている、コラムニストの泉麻人さん。フリーランスになって、今年がちょうど30年目となる泉さんに〈太く長く〉活躍し続ける理由を伺いました。
文章を書くきっかけは、小学校高学年の頃。
当時担任だった先生が、毎日日記をつけることを宿題にしたんです。
日記といってもちょっと普通のとは違って、毎日自分で題目を決めて、そのことについて短文をまとめるっていう、いわばエッセーですね。
それが文章の訓練にもなったし、記録をつけることの面白さを知るきっかけになったんです。
(当時の日記をめくりながら)たとえばある日のタイトルは『記録的な大雪が降った』だったり、あるいは『美濃部新都政はじまる』みたいな時事ネタも入ってきたりね。
その題目についての文章にあわせて、新聞の切り抜きや資料も貼付したりして、欄外にトピック的なニュースを書き込んだりして、ちょっとしたひとり新聞みたいな感じですよね。
大雪が降った日の日記を見ると、大雪についての記事や天気図もスクラップしてある。
記事の見出しに〈台湾坊主〉っていう言葉があって、この〈台湾坊主〉という言葉は、台湾あたりで発生して大雪や嵐を起こす大きな低気圧のことで、いつからか使われなくなった言葉なんですよね。
6年生の時のある日の日記には、東京上空に〈日立キドカラー〉の飛行船が飛んだって書いてある。
こういうちょっとしたことって、昭和史の本なんかにはなかなか載ることがない。
日記に書いてあったことが、実際に原稿を書く時の資料として役立つ場合も多々ありますね。
だいたい僕が今扱ってるような題材は、子どもの頃から好きだったことなんですよね。
たとえば地図を眺めたりするのもそうだし、テレビとか、昆虫とか、バスとか……実は7年ぐらい前に気象予報士の資格をとったんですが、天気についても小学生の頃から好きでしたからね。
とはいえ、自分なりにある程度の領域はあって。歴史についても自分が物心つく前後の、昭和の戦後史ぐらいまではすごく興味あるんだけど、江戸時代まで行っちゃうとちょっと薄くなる。
古いものが全部好きかというと、そうでもないんです(笑)。
ただ、こういう仕事を長く続けていると、知識や興味の枝が伸びていくことはたしかで。
東京についてのコラムを書いても、以前は昭和30年代ぐらいまでの、自分の記憶にある東京が興味の範疇だった。
ところが、町歩きをしていて気になった場所があって、もともとはどういう由来があるのかと辿っていくうちに、江戸の大名屋敷だったのがわかって、じゃあ江戸の古地図を買ってみよう……とかね。
そういう感じで、扱っていくフィールドが深まっていくことはありますね。