私たちが日常的に食べている麺には、乾めん、生めん、半生めん、冷蔵めん(チルドめん)、冷凍めんなど様々な種類が存在します。ここでは、麺の種類による違いや、日本全国にたくさんあるうどん料理について学習しましょう。
麺の種類
第1項 乾めん 2-1
乾めんには、「うどん」「そうめん」「ひやむぎ」「きしめん」など、様々な種類があり、これらは麺の太さで分類されています。麺の製造に機械が導入され、さまざまな太さの麺が自由に作れるようになりました。これにより従来の「そうめん」より少し太い麺を「ひやむぎ」といって販売するなど、製造業者が独自の解釈で品名を付けはじめたため、そうめんとひやむぎが区別しにくくなるなど、麺の規格が必要になりました。そこで制定されたのが、「乾めん類の日本農林規格(農林水産省)」です。
「乾めん類の日本農林規格(農林水産省)」では、乾めんを次のように定めています。※1
小麦粉又はそば粉に食塩、やまのいも、抹茶、卵等を加えて練り合わせた後、製めんし、乾燥したもの
※1 「乾めん類の日本農林規格(農林水産省)」
最終改正 平成28年2月24日農林水産省告示第489号
http://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/pdf/kikaku_12_kanmen_160224.pdf
次に乾めんの種類ですが、それぞれの麺の太さの違いによって「うどん」「ひやむぎ」「そうめん」「きしめん」などに分類されています。「乾めん類の日本農林規格(農林水産省)」が制定される前は、1寸(約3cm)の幅に麺が何本のるかによって分類していました。例えば、そうめんは24本以上、ひやむぎは18本から22本などです。
<出典>
全国乾麺協同組合連合会 乾めんのお話>ひやむぎとそうめんの違い>乾めん類(機械製法)
http://www.kanmen.com/topic/04_chigai.html
現在では「うどん」「ひやむぎ」「そうめん」「きしめん」は「食品表示基準(消費者庁)」によって、下記の通り定められています。※2
乾めんには、麺の製造法に「機械製乾めん」と「手延べ乾めん」とがあります。
<機械製乾めん:干しめんの定義>
・「干しうどん」又は「うどん」
長径を1.7mm以上に成形したもの
・「干しひやむぎ」、「ひやむぎ」又は「細うどん」
長径を1.3mm以上1.7mm未満に成形したもの
・「干しそうめん」又は「そうめん」
長径を1.3mm未満に成形したもの
・「干しひらめん」、「ひらめん」、「きしめん」又は「ひもかわ」
幅を4.5mm以上とし、かつ、 厚さを2.0mm未満の帯状に成形したもの
<手延べ:干しめんの定義>
・「手延べうどん」
長径を1.7mm以上に成形したもの
・「手延べひやむぎ」又は「手延べそうめん」
長径が1.7mm未満に成形したもの
・「手延べひらめん」、「手延べきしめん」又は「手延べひもかわ」
幅を4.5mm以上とし、かつ、厚さを2.0mm未満の帯状に成形したもの
※2 「食品表示基準(消費者庁)」
平成27年3月20日内閣府第10号
http://www.caa.go.jp/foods/pdf/150320_kijyun.pdf
第2項 生めん 2-2
街中のうどん屋さんやスーパーマーケットの麺売場などで、生めんの看板やパッケージをよく見かけますが、生めんは「生めん類の表示に関する公正競争規約施行規則の逐条解説(公正取引委員会)」で下記のように解説されています。※3
生めんとは、常法で製造された生うどん、生そば、生中華めん又はこれに類するもので、その製法は多加水を特徴とする手打めんを除いては、通常小麦粉の26~35重量%の食塩水、希釈かんすい等を加えて製めんされたものである。
つまり、小麦粉に対して26~35%の水(食塩水等)を加えて製麺したものが生めんと考えられます。
※3 「生めん類の表示に関する公正競争規約施行規則の逐条解説(公正取引委員会)」より
<出典>
全国生めん類公正取引協議会(全国製麺協同組合連合会)
http://www.zenmenren.or.jp/men/about/index.html
麺は打ちたて、ゆでたてが一番おいしいといわれています。うどんの本場・香川県には、一般のお客様が気軽に食べられるようにとうどん店を兼ねた製麺所も多く、全国から打ちたて、ゆでたてのさぬきうどんを求めてファンが集まり、中には開店前から行列ができる店もあります。
第3項 半生めん 2-3
半生めんは、「生めん類の表示に関する公正競争規約施行規則の逐条解説(公正取引委員会)」で下記の通り解説されています。※4
半生めんとは、常法で製造された生めんを、常温又は加熱空気、或いは湿熱空気を使用することにより、乾めん類よりも高水分の段階で乾燥を止めたものをいう(加熱されたものであってもアルファー化は不十分)。半生製品の水分は20~27%程度で生めんの特徴に近く、乾めんの欠点を除こうとして土産物を中心に開発されたものである。
※4 「生めん類の表示に関する公正競争規約施行規則の逐条解説(公正取引委員会)」より
<出典>
全国生めん類公正取引協議会(全国製麺協同組合連合会)
http://www.zenmenren.or.jp/men/about/index.html
半生めんとは生めんを作る工程に「乾燥」を加え、最終的な水分含有率を減らし、酸化を抑えた状態の麺を指します。
第4項 冷蔵めん(チルドめん) 2-4
ゆでた麺を加熱殺菌後に袋に入れて完全密封し、10℃以下で冷蔵保存したものが冷蔵めん(チルドめん)です。すでに一度ゆでている冷蔵めん(チルドめん)は、乾めん類と異なり、ゆで時間も短くて便利な麺です。
第5項 冷凍めん 2-5
近年、家庭で食べるうどんも、お店で食べるうどんもその品質が著しく向上しています。それは、製麺技術の向上に加え、冷凍技術の進歩のおかげといえます。
冷凍めんは、打ちたて、ゆでたての麺の一番おいしい状態を長期間保つために、急速凍結技術が用いられます。急速凍結とは、麺をゆでて冷水で締めた直後に、短時間で凍結させることをいいます。
麺の一番おいしい状態を保つには、ゆでた直後の麺に含まれる水分量の維持が重要です。外側は約80%と水分量が多く、中心部は約50%と水分量が少ないのが理想の麺の水分量です。これがもちもちした食感としっかりしたコシのあるおいしい麺の条件になります。
一般的においしいといわれるコシのある麺は、麺に含まれるグルテン組織がしっかりしている麺です。急速凍結は、麺を極めて短時間で凍結させるため、麺の組織に含まれる水分が小さな水の玉のまま氷の結晶になります。麺を凍結させた時に氷の結晶が小さければ、このグルテン組織が壊れることなく、コシのある麺になります。
逆に時間をかけて、じわじわ麺を凍らせると、麺の組織に含まれている水分同士が集まってくっつき、大きな氷の結晶になってしまいます。麺を凍結させた時に氷の結晶が大きければこのグルテン組織が壊れてしまい、コシのない麺になります。
急速凍結した麺は、細菌が繁殖しない温度帯まで一気に下げるため、麺を劣化させないばかりでなく、細菌の繁殖を抑える保存料を使用する必要がありません。だから小麦本来の風味を安心して楽しめるのです。
麺の最高のおいしさを引き出し、最高の技術でそのおいしさを保つ。それが冷凍めんなのです。
<出典> 「日本冷凍めん協会」
https://www.reitoumen.gr.jp/
うどんの料理
ここでは、日本全国にたくさんあるうどん料理について学習しましょう。
第1項 すうどん、かけうどん 2-6
「すうどん、かけうどん」は、うどんの上に具を何ものせず、ねぎなどの薬味を散らすだけで麺本来のおいしさを味わうものです。
ゆであがった麺を一度冷水でキュッと締め、再び湯でさばいてだしをかけます。麺とだしのバランスが絶妙な一杯が多く、いりこ風味やかつお風味などがあり、夏場には冷たいだしをかける「冷かけ」も登場します。ゆであがった麺を冷水で締めた後、水切りをしてからざるなどに盛りつけて、つけ汁で食べる方法も一般的です。
第2項 釜揚げうどん 2-7
釜の中でゆであがった麺を、そのままゆで汁と一緒に器に移したものです。添えられたつけ汁に少量ずつつけながらいただきます。ゆであがった麺は水で締めていないので、コシはあまりありませんが、独特のふんわりとした食感とわずかに感じる塩味が特長です。
また、釜でゆであがった麺を水で締めずにそのまま丼に移し、生玉子を割り入れて醤油をかけていただく釜玉うどんも人気。箸で混ぜるとアツアツの麺に玉子が絶妙にからみつき、麺のおいしさとともに豊かな香りとまろやかな味わいが堪能できます。
第3項 ぶっかけうどん 2-8
ゆであがった麺を冷水で締め、つけだしを麺に直接かけていただきます。ねぎや大根おろしなどがトッピングされている場合が多く、それらを大胆にかき混ぜて食べることで、食材が醸し出す一体感も楽しめる一杯です。お好みで温かいぶっかけもあります。
ゆであがった麺を冷水で締め、そのまま生醤油を回しかけたものが生醤油うどんです。シンプルな食べ方だからこそ麺本来の持ち味とコシがストレートに伝わる一杯で、香川県では定番の食べ方になっています。
第4項 かやくうどん 2-9
一般的にうどんやラーメンなどの具や薬味のことを「かやく」といいますが、薬味を加えるという意味で「加薬」と書きます。うどんの場合は、主役のうどんのシンプルな味を補佐する食材が薬味として選ばれます。五目うどんやおかめうどんも「かやくうどん」の一種で、天かすやかまぼこ、しいたけなど地域で色々な食材が選ばれています。
第5項 きつねとたぬき 2-10
うどんを代表する食べ方のひとつがご存じ、「きつね」と「たぬき」です。きつねうどんは、油揚げを甘く煮たものを、だしをはったうどんにのせたものです。
実は、油揚げをのせたうどんを「きつね」と呼ぶのは江戸だけ。大阪では「きつねそば」を「たぬき」 と称し、京都では「きつねのあんかけ」のことを「たぬき」と呼んでいました。また、「稲荷そば」「稲荷うどん」と呼ぶ地域もあります。
第6項 うどんのタネもの 2-11
うどんは、さまざまな食材と組み合わせて食べる料理ですが、食材をうどんと分けて食べたり、うどん上にのせて食べたり、あるいはうどんと一緒に鍋で煮たりとさまざまです。
うどんと分けて食べる、あるいは好みでのせて食べる食材の代表といえば、天ぷらなどの揚げ物です。えび天、ごぼ天、かき揚げなど地域によってさまざまな種類があり、そのまま食べるか、うどんのつゆに入れて楽しみます。
一方、うどんと一緒に鍋で煮るものといえば、栃木の「耳うどん」、群馬の「おっきりこみ」、関東全般で親しまれている「けんちんうどん」、山梨の「ほうとう」、名古屋の「味噌煮込みうどん」、そしてさぬきうどんで有名な香川の「しっぽくうどん」などなど。こちらもさまざまな食材との組み合わせで地域の味が楽しめます。