吉田類
酒場詩人
高知県生まれ。 酒場や旅をテーマに執筆。イラストレーター&エッセイスト、俳句愛好会『舟』を主宰。著書に『酒場歳時記』(NHK出版)、『酒場のオキテ』(青春出版社)、『東京立ち飲み案内』(メディア総合研究所)、『吉田類の旅と酒場俳句』(KADOKAWA)などがある。BS-TBSにて『吉田類の酒場放浪記』(DVDも発売)に出演中。
発売から40年、愛され続けて来た『冷凍うどん』にちなんで太く長く愛され続ける各界の著名人の皆さんに<愛される秘訣>を教えていただきます!
先日番組の収録で香川の飲み屋さんを何件か回ったんです。次の朝、栗林公園に行ったらお腹が空いて「うどん食べよう」って僕が言うと、「昨夜も食べましたけどいいんですか!?」とスタッフが証拠写真を見せてくれた。最後のシメに皆でカレーうどんを食べていたんだよね。酔っていたから全然憶えてない! というわけで、2食続けて食べたくなってしまうほど、うどん好きです(笑)。毎日3食のうち1食がうどんでもいいくらい。もちろんコシがないとダメなので、讃岐うどんが一番。
人の記憶というのは非常に面白いもので、最初に詠んだ俳句とか最初に美味しいと思ったものは憶えているんですよ。子供の頃からおやつ感覚でうどんは食べていましたが、小学校3年生のときに母親に連れて行ってもらった店の讃岐うどんは格別でした。薄い色なのにコクがある出汁に、柚子を絞っただけのシンプルなものですが、子供心に感動して今でも忘れられません。土佐は、平安時代の都で食されていたものに一番近い出汁の味を残す「出汁の国」と言われています。土佐の出汁と讃岐のうどんが一緒になったら、これはもう本当に美味ですよ。テーブルマークの讃岐うどんはコシの強さがちょうどいい。今度、土佐の出汁と合わせて食べてみたいなぁ。
ヨーロッパ時代、同じ場所にいたのはパリの2年だけで、あとは基本的に放浪していました。
『酒場放浪記』もそのときからの延長、つまり旅番組みたいなものですね。北海道から沖縄まで行ったり来たりの忙しい日々ですが、東京の収録で紹介したお酒を旅先で見つけて飲んだり、その土地の名物や旬のものを堪能したりできるから楽しいですよ。
好物? ウツボのしゃぶしゃぶ以外は特にないけど、強いて言えば新鮮な旬のものが旨いと思う。食材の旨味を引き出すようなシンプルな調理法が好きですね。高知県という自然が豊かで水の美味しい場所で育ったおかげで、本物の味を舌が憶えています。子供の頃に新鮮でいいものを食べることは大事ですよ。各ジャンルの有名シェフに北海道出身者が多いのは、水が奇麗な土地のせいだと思います。とはいえ、なんでも新鮮ならいいというものでもありません。魚は穫ってすぐだと固すぎて美味しくないですし、鶏も絞めてから6~8時間後が一番美味しい。食べ物に限らず、なにごとも「ほどよい加減」が大事ってことなんじゃないかな。